410 『誘拐されて』 R・L・スティーヴンスン

  • 2017.11.14 Tuesday
  • 15:27

 1751年6月、エディンバラにほど近いエッスウディーンに住んでいたデーヴィッド・バルファは、両親に死に別れたあと、教区のキャンベル神父から父親からの遺言を聞かされる。父の遺言というのは、クラモンド教区のショウズ家を訪ねるようにというものだった。

 だが、グラスゴー街道に出、クラモンド教区に入ってショウズ家について尋ねると、誰もが一様に暗く嫌な顔をした。そして、ついにある女性から示された谷底のショウズ家は巨大な廃墟のようで、しかもその女は家の主人に向かって呪いの言葉を投げつけるのだった。

 

 ようやく家にたどり着き初めて会った叔父は、明らかににデーヴィッドに対して何か邪なことを企んでいるようだった。デーヴィッドに幾らかに金を渡すと見せかけて彼を殺そうという叔父の最初の企みは失敗。だが、デーヴィッドのちょっとした油断から、叔父は、アメリカに向かう船の船長に白人奴隷としてアメリカで売り払うよう彼を誘拐させてしまう。

 

 無法者のような船長が操る怪しげな船と、その船の中での生死をかけた戦いは、スティーヴンスンの名作『宝島』の船内での戦闘シーンを彷彿とさせる。だが、船はスコットランド沖で座礁し、話の舞台は再び海から陸へと移る。

 

 船にぶつかって転覆したボートのただ一人の生き残りアラン・ブレックは、スコットランド高地の郷士で、ジェイムズ2世追放後、決起を画策するジャコバン党員の一人だった。陸に戻ったアランとデーヴィスは政府軍からの逃避行を続けながら、デーヴィスの生まれ故郷の低地へと戻り、デーヴィスの出生の秘密を知る。

 

 チャールズ1世処刑後、王位復興のために画策した勤王の志士たち。ジェイムズ2世追放後、決起したジャコバン党員たち。そして、エジンバラ出身のスティーヴンスンが慣れ親しんだ北の海とスコットランド周辺の自然描写は、とにかくリアルだ。

 だが、スコットランドの歴史を踏まえ、自分の最高の作品だと作者本人が語ったというなのだが、デーヴィッドの出生の秘密というのも月並みだし、デーヴィッドの遺産問題が解決したというだけで、デーヴィッドの目の前で殺された赤狐ことキャンベルはいったい誰に殺されたのか全く分からないまま、何より、スコットランド高地の郷士にして熱烈なジャコバン党員であるアランの行動も何一つ実を結ばないままで話が終わってしまうのが、なんとも中途半端。デーヴィッドの遺産問題というだけでなく、歴史的事実をも絡めた歴史冒険小説にしたかったのだろうが、歴史を絡めたのなら、最後までちゃんとその歴史の部分も収拾をつけてほしかった。

 

誘拐されて 図書館本電子書籍

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