458 『瘋癲老人日記』 谷崎潤一郎

  • 2018.05.13 Sunday
  • 15:06

 77歳の卯木督助は、自分にはもう性的な能力はないと自覚している老人。彼は息子の妻の颯子に性的魅力を感じており、公然と彼女ばかりを可愛がっている。

 主人公は、自分を年寄り扱いしたり自分に対して何かと画策しようとする家族への反発から、自分の実の娘や息子よりも嫁に気持ちが傾いていったのだった。だが、それはいつの間にか性倒錯という形になって嫁を溺愛するようになったのだった。

 

 息子の嫁に性欲を覚える不能老人の性倒錯はカタカナ書きの日記形式で綴られていくのだが、彼の願望は、徐々に激しくなっていき、ついには、颯子の足に踏まれたいというフット・フェティシズムとマゾヒズムの欲望を抱くまでになっていく。

 

 また、嫁の颯子も、自分が舅に気に入られていることを十分に意識したうえで、舅を挑発するかのような言動を繰り返す。自分がシャワーを浴びているときに舅の部屋と隣接している浴室のドアを閉めないとわざとのように言ったりする行為は、まるで覗いてくれと言っているかのようだ。さらに、彼女は、どう考えても不倫しているとしか思えない夫のいとこの春久にもシャワーを使わせることを主人公に承知させるのだが、それは、わざと主人公の妄想を掻き立てさせようとしているかのようだ。

 

 この作品は、老人の性を描いたものとして、同じく谷崎作の『鍵』や、川端康成の『眠れる美女』と併び称されている。

 年をとってもなお美しい女性に魅かれずにはいられない、老いた男性の性。男であれば、舅だろうが夫のいとこだろうが、誘惑せずにはいられない女の性。

 だが、私は、春久と遊んでいるというのにこんな年老いた舅をももてあそばずにはいられない、夫との夫婦生活が全くうまくいっていない嫁颯子の夫婦生活の寂しさの方ばかりが気になった。

 

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