434 『オトラント城奇譚』 ホレス・ウォルポール

  • 2018.02.16 Friday
  • 15:36

 オトラント城の城主マンフレッドには、18歳の美貌の娘マチルダと、15歳の病弱で凡庸な息子コンラッドがいる。マンフレッドは癇症で、娘には全く愛情など持っておらず、コンラッドのことだけを溺愛しており、ヴィツェンツィア侯の娘イザベラをコンラッドの許嫁として自分の子どもたちと一緒に育てている。

 

 コンラッド15歳の誕生日、その日はコンラッドとイザベラとの結婚式の日でもあった。ところが、その晴れの日に、コンラッドは普通の兜の百倍ほどもある大兜に押しつぶされて無残な死体となって発見される。

 息子の死に直面したマンフレッドは狼狽するが、驚くべき速さで態度を変え、妻を離別して即刻コンラッドの妻にと養育してきたイザベラを自分の妻にしようと目論む。

 

 オトラント城には、古くからある言い伝えが伝わっている。オトラント城に真の城主が成人して入城した場合は、そこに住んでいた者は直ちに城を明け渡さなければならない、と。

 

 現在の城主マンフレッドの癇症は、その言い伝えに起因していた。つまり、マンフレッドは正式のオトラント城の城主ではなく、簒奪者だったのだ。その言い伝えに怯えていたマンフレッドは、なんとしても自分の息子をオトラント城の城主として名乗りあげさせなければならなかった。そして、その希望がついえたとき、もはや息子を産む可能性がなくなってしまった妻など捨ててイザベラに自分の、この城の跡取りとなる息子を産ませようと考えたのだ。

 

 コンラッドの誕生日に起こった不気味な出来事。その日から続々とオトラント城にやってくる者たち。不思議な現象は、オトラント城内だけでなく、彼ら自身の身にも起きていた。そして、マンフレッドの野望は、ことごとく打ち砕かれていく。

 

 城を取り囲む鬱蒼とした木々、苔むした石垣、地下に残る謎の通路と、幽霊が登場するのにぴったりのお膳立ての妖しげな雰囲気。後ろ暗い過去を持つ邪悪な心を持った城主と、本来は正当な城の跡取りなのに、奸計のため、悲惨な暮らしをしていた若者。そういった過去をひきずったままの古城は、それ自体が意志を持っているかのように、そこに住む当主を選択しようとしているかのようだ。

 

 最初はマチルダに心ひかれた若者も、マンフレッド一族の滅亡とともに、あまりにも簡単にマチルダを忘れてしまう。そして、彼は、もともとオトランド城とゆかりのあったイザベラに心惹かれていく。父親からも愛されず、マンフレッドの一族だったがために自らも死なねばならず、あまりにも簡単に恋人にも忘れられてしまうマチルダ。彼女の設定は、あまりにも悲しい。

 

 古い城を舞台としたゴシックミステリーとして有名な話だが、あまりにも訳が古い。電子書籍にするなら新訳でしてほしいと思った。

 

オトラント城奇譚 図書館の電子書籍