490 『フィーメールマン』 ジョアンナ・ロス
- 2018.09.15 Saturday
- 16:31
男性のみが罹患する病気で男性が死滅してしまっている未来の地球・ホワイルアウェイから使節としてやってきたジャネット。
第2次大戦などなく大恐慌だけが延々と続いているという別次元の1969年に生きている、アメリカの女性ジーニイン。
男性と女性が戦争をしている多元宇宙から来ているジェイル。
そして、体と魂はそのままで女性人(フィーメール・マン)になったジョアンナ。
ドッペルゲンガーとして互いに交錯し合う4人の「私」。
男性依存を辞められないジーニイン、男性は敵でしかないと考えているジェイル、そもそも男性の必然性を感じていないジャネット。作者は、彼女たちの言動から、女性の自己実現を描こうとしている。
この作品に登場する男たちは、とにかく男であることを自慢し、女性を下に見、何かにつけて女の知性や自発性を笑いものにしている。当時の男社会を揶揄するものとしてかなり風刺的に描かれたその男たちは、その背後で涙を流している女性たちを映す鏡でもある。
今の時代に読むと、同性であってもかなり面映ゆい作品だが、こういった女性たちの声があがったからこそ今の私たちの生活があるということをやはり女性は常に考えていなければならないということなのだろう、とも思う。
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