459 『オルノーコ』 アフラ・ベイン

  • 2018.05.20 Sunday
  • 20:42

 この作品は、黒人の王子オルノーコを主人公とし、彼は奴隷にまで身を落としていてさえその気品を失わなかったとほめたたえていることなどから、この作品は黒人を主人公とした作品として『アンクル・トムの小屋』と並ぶものと考えられていたという。

 

 だが、オルノーコとアンクル・トムとでは、相当な違いがある。

 

 思うのだが、オルノーコは肌が黒かったというだけで、その精神は、白人と何ら変わるところがなかったのではないだろうか。

 王の息子である彼は、その部族の最高権力の下にあり、フランス人家庭教師に育てられたため英語もフランス語も堪能で、ぜいたくな衣服を身にまとい、戦に勝って捕虜とした他の部族の者たちを奴隷として売ることで多額の金を得ていた。

 

 そういった、まるで白人と同じような振舞をしていたからこそ、一部の白人には、彼は素晴らしい人間として映り、敬意を示されることになった。

 だが、彼は白人ではなく黒人だから、捕虜たちの売り手であるオルノーコと売られる黒人奴隷たちの差を見分けられない者もいる。オルノーコをだました船長がまさしくそれで、この船長によって、オルノーコ自身も奴隷として売られてしまうことになる。

 

 オルノーコは自分が奴隷になったことについてはそれほど悲観していなかったのだが、自分の子が生まれるときになって、奴隷の子どもは生涯奴隷として扱われることになってしまうため、それだけは避けたいと躍起になる。自分が奴隷売買していた時には何の良心の呵責も感じなかった彼が、自分の子どもの境遇を考えたときその奴隷状態の悲惨さに思い至る。人は、自分が同じ立場に立たないと、相手のことが分からないのかもしれない。

 

 ところで、この『オルノーコ』、 夏目漱石の『三四郎』に登場する。与次郎が「偉大なる暗闇」と称した広瀬先生が『オルノーコ』を読んでいるのだが、漱石は広瀬先生に「アフラ・ベインが閨秀作家だ」と言わせてはいるが、『オルノーコ』の感想は言わせてはいない。夏目漱石の感想を知りたかったなあと思う。

 

オルノーコ2