312 『牧師館の殺人』 アガサ・クリスティ

  • 2017.02.22 Wednesday
  • 17:18

 イギリスの田舎の閑静な村、セント・メアリー・ミード。

 一見平和そうに見える村だが、その村に住むルシアス・プロズロウ大佐は、村中の嫌われ者だった。そのプロズロウ大佐が、こともあろうに、牧師館の書斎で、射殺死体で発見された。

 

 事件は若くてハンサムな画家ロレンス・レディングが早々に自首してきたことで、簡単に解決するかに見えた。ところが、遺留品、アリバイの点から、その自首には信憑性がなくなり、真犯人を巡って村人たちは混乱の渦に巻き込まれていく。

 

 村のゴシップにめっぽう詳しい老婦人ミス・マープルは、「大喜びでプロズロウ大佐を片付けたいと思っている人は、少なくとも十人はいる」と言う。

 

 探偵小説というと、自分の足で歩いて情報を集めていく段階こそが見どころとなっている作品が多い。

 だが、ミス・マープルは滅多に自分から出向いて行ったりはしない。それでいて、「プロズロウ大佐を殺したいと思っている人は十人はいる」などと自信たっぷりに言ってのけてしまうのだ。

 

 女性は、とにかく噂好きだ。

 ことに、自由になる時間がたっぷりあるご婦人にとっては、どんな些細な出来事でも話のネタになる。クレメント牧師が嘆く通り、この村で起こったことはあっという間に村中に知れ渡ってしまうのだ。

 

 自分では表立った調査などほとんどすることもないまま、我が家から見えたこと、村人たちが話していたことの中から真実を見つけ出し、事件解決の糸口を見つけてしまう。このミス・マープルは、安楽椅子探偵よりはいくらか行動範囲が広い設定と言ったところか。

 

 ミスマープルは初読なのでシリーズすべてがこんな感じなのかどうかは知らないが、こんな一風変わった素人探偵が活躍できるのも、セント・メアリー・ミードぐらいの小さな村ならではのことなのだろうと思う。

 

牧師館の殺人