482 『レッド・ドラゴン』 トマス・ハリス

  • 2018.08.18 Saturday
  • 15:26

 殺人鬼であり、高度な知能を持つ精神科医ハンニバル・レクター博士が登場するシリーズの第一作。

 

 満月の夜を狙って起きた連続殺人事件。FBIの特別捜査官ジャック・クロフォードは、元FBIの捜査官で異常犯罪捜査の専門家であるウィル・グレアムに再び捜査現場に戻ってほしいと要請する。

 ウィル・グレアムは、レクター博士が引き起こした事件を捜査し、レクター博士が犯人であることを突き止めたが、彼が犯人を特定したことをレクター博士に悟られてしまい、瀕死の重傷を負っていた。傷が癒えたウィルはFBIを辞め、結婚して、今は妻と妻の連れ子であるウィリーと三人で幸せに暮らしていたのだった。

 

 ウィルは、誰かと一緒に話しているといつの間にか相手の口調と同じ口調になってしまうという、相手の心に同調しやすい気質を持っていた。そのため、殺人現場に入ってそこにあるものを見たり、その場での大まかな動きを知るだけで、犯人の行動を追体験できてしまうのだ。そのようにして、ウィルが何度も殺人現場に足を運び、まだ血糊が残った部屋で殺人犯の精神と一体化しようとする様子は、何とも鬼気迫るものがある。

 

 どうしても確証が得られないウィルは、今は犯罪者病院に収容されているレクター博士のもとを訪れ、何らかの助言を得ようとした。

 だが、ウィルのその行動は、あとあと、犯人にも、ウィルにも大きく影響を及ぼすことになる。

 

 自分の容姿に強いコンプレックスを持っている人間が、新たな別のものに生まれ変わるための儀式として行う犯罪、そのまがまがしいまでの狂気。

 高度な知能を有しながら人間的感情を全く持たないレクター博士の狂気と、その狂気に吸い寄せられる人々。

 普通の生活を送ってはいるものの、実は、潜在的に悪に引き付けられるものを持っている犯罪捜査官のあやうさ。

 

 こんなにも簡単にプライバシーが漏洩してしまう怖ろしさ。だからこそ、現在、これほどまでにプライバシー保護が厳しく言われるようになったのだろうが、レクター博士なら、それでも、どんなことをしてでも相手を脅かす手を見つけてしまうのだろうという気がするところが、また、なんとも怖いところだ。

 

レッド・ドラゴン