331 『JIMMY CORRIGAN』 クリス・ウェア

  • 2017.03.27 Monday
  • 20:24

 『JIMMY CORRIGAN』は、作者自身が出版していた『アクメ・コミック・ライブリー』に掲載されていたコミックで、同じくガーディアン必読書に選ばれているダビッド・ベーの『大発作』ともども世界三大コミックの一つとして挙げられているほどの人気コミックだ。また、彼のコミックは、グラフィックノベルとも呼ばれている。ヨーロッパ最大の漫画祭の一つであるフランスのアングレームで開催されている「アングレーム国際漫画祭」の2003年第30回最優秀作品賞を受賞している。ちなみに、2007年第34回には、水木しげるの『のんのんばあとオレ』が最優秀作品賞を受賞している。

 

 この作品には、三人の「ジミー・コリガン」が登場する。

 まず一人目は、シカゴに住んでいる36歳の冴えない中年男。彼は働いてはいるものの内気過ぎて他の人とうまく話ができず、何をやってもパッとしない。彼には老人ホームに住む口うるさい母親がいて、日に一度以上、仕事場であれどこであれ、電話がかかってくる。

 二人目は、子ジミーの父親ジミー。彼は、子ジミーがまだ幼かったときに妻子を捨てて家を出、別な場所で別な女性と結婚している。

 三人目は、祖父ジミー。彼は、自分のことを全く顧みない父親と祖母と三人で19世紀のシカゴに住んでいる。祖父ジミーは養子、性格とも子ジミーと同じで、一緒に住んでいるとはいえ父親との関係も子ジミーとよく似ている。祖父ジミーの父親はシカゴ博覧会(実際にそんなものはなかった)建設に携わっている。

 

 話は、36歳の子ジミーのところに数十年音信不通だった父ジミーから会わないかとの便りが届き、子ジミーが顔も知らない父親に会いに行く話と、祖父ジミーの時代の話が交互に描かれていく。さらにそこに子ジミーの夢想まで入ってきて、かなり分かりにくい。

 

 孤独で感情が欠落したようなジミーは、社会に不満と疎外感を感じながら孤立している現代人の典型として描かれているようだ。絵がきれいだということだが、男性向けのコミックなので女性の眼から見ると陰気にしか見えない。もちろん、そういう男として描かれているからなのだけれども、ジミーを好きになることはなかなか難しいのではないだろうかと思われる。

 

 孤独な男を描く独特の世界観だけでなく、この作品は、コマ割りの中に展開図や細かいテキスト、ペーパークラフトまで挿入されていて、コミックとしても独特な手法を取っている。そういった点でも、コミックをアートの領域に高めたとして高く評価されているようだ。

 

ジミー・コリガン