435 『トリフィドの日』 ジョン・ウィンダム

  • 2018.02.17 Saturday
  • 15:51

 火曜の夜、流星群の雲の中を地球が通過し、誰もがその華麗なる天体ショーに浮かれ騒いでいた。

 

 その数年前、ソ連は、トリフィドなる謎の植物から高品質の油を摘出することに成功していた。ソ連が秘密実験工場でトリフィドを大量に栽培しているとの情報を得た産業スパイがその種を持ち出すことに成功したのだが、彼の乗った飛行機は撃墜され、トリフィドの種子は、世界中にばらまかれた。

 主人公のビルは、生物学者で、そのトリフィドに関わる仕事をしていた。トリフィドは、有用な植物として奪い合いになるほどだったが、実は、成長すると勝手に歩き回ることができるだけでなく、毒を出す触手で敵を生き物を攻撃し食べてしまうという食肉植物なのだった。だが、トリフィドを粉砕するトリフィド銃と防御スーツがあれば万一大丈夫襲われても大丈夫だし、何より、人は、トリフィドを見かけたら逃げることができる。ただ、同僚は、ぽろりとこんなことを言った。「目が見えなくなったりしたら、トリフィドの思うつぼだな」と。

 

 ビルは、流星群が見られた火曜の夜、トリフィドの毒の触手で目をやられたために入院していた。世紀の天体ショーだと大騒ぎする人々からただ一人離れ、包帯された真っ暗闇の中で、寂しい時を過ごしていたのだ。

 ところが、水曜の朝、世界は一変していた。ビルが周囲の異様な静けさに驚いて眼帯を外してみると、誰もがみな、目が見えなくなっていた。実は、彼らは、あの夢中で見ていた流星群の緑の光で目をやられてしまっていたのだった。

 

 そして、同僚の不気味な予言そのままに、目の見えない人間たちをトリフィドが食い物にし始める。

 

 この何やら不気味な幻想小説は、その背後にいくつもの暗示が込められている。

 

 まず一つは、多数のほとんど無能な人間(ここでは目が見えなくなった人間)とごく少数の力のある人間(ここでは目が見える人間)が存在するとき、どういった社会構成が正しいといえるか、ということ。

 この作品の中では、目が見える者だけが集まって種を保存しようというグループ、何人かの目が見えない者に眼が見える者を一人つけ、彼を全体の眼として働かせるようというグループ、目が見える者も見えない者も誰もが平等であるべきだというグループ、とにかく楽観的に助けを待とうというグループなど、いくつかのグループが生まれている。

 だが、そのどれが正しいとも、判断は下されてはいない。

 

 もう一つの暗示はもっと不気味だ。

 それは、このトリフィドの世界的な広がり、流星群という天体ショー、ふいに各グループの中で広まっていった伝染病といった出来事は、果たして、すべて偶然に起こったことなのか、ということだ。こういったことが、すべて、早くから着々と仕組まれていたことだったとしたら・・・。

 この話が書かれた時代は、冷戦時代で、世界は、何が起こっても不思議ではないような不穏さが満ちていた。そして、それこそが、作者の危惧でもあったのだろう。

 

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